事業・調査紹介

産業植林関連事業

2001/11/17

【産業植林適地の発掘調査】
インド(2001年度)

目次

はじめに
インド位置図

  1. 調査の目的
  2. 要約
  3. 一般情勢
    1. インドの一般指標
    2. 自然条件(概論)
    3. 社会条件
    4. 二国間の関係
    5. 貧困・農業・森林
  4. 経済社会政策の実態と課題
    1. 経済・産業政策と課題
    2. 経済改革の現状
    3. 貿易政策と貿易動向
    4. 土地政策の現状と課題
  5. 森林及び林業
    1. 森林資源
    2. 林業の歴史
    3. 森林政策と関連法令
    4. インドの植林
    5. 社会林業
    6. 森林政策の課題
  6. 林産業と林産貿易
    1. 林産業
    2. 林産品貿易
    3. 今後の木材需要
    4. インドの紙パルプ産業
    5. 製紙産業による産業植林
  7. 産業植林の可能性
    1. 森林資源整備の動向
    2. 森林関連産業と貿易
    3. 紙パルプ産業の動向と資源の展望
    4. 経済発展と投資機会の拡大
    5. 国土環境整備と植林投資のシナリオ
  8. 写真
  9. Appendix
    1. 調査員の構成
    2. 調査日程
    3. 面談者リスト
    4. 今回の調査における各関係者意見
    5. インド製紙産業参考表
    6. APFDCの概要
    7. ITC Bhadrachalam Paperboard Mill
要約

おおよそこの半世紀の間、インドの森林・木材需要は燃料・飼料利用を中心に一貫して増加してきており、一方で森林資源保護・整備が立ち後れ、実態として森林資源蓄積に関する合理的な経営が実現しなかったことから、森林ストックの激減・荒廃と林地荒蕪化が顕著に進んだ。燃料・飼料利用の増加は基本的には地球上の2.5% の土地に1/6の人口が住むという巨大な人口とその増加傾向によるものであり、背後に貧困問題がある。農業生産性の低い農・林地に生活を依存する森林・農村地域の貧困農民層は、貧困の故に農・林地に対して過度に依存することになり、より一層の農林地荒廃化が進むという悪循環が続いてきた。

こうした市場の需給状況の改善を目指す森林資源行政は植民地時代の19世紀半ばに始まった森林保護行政を経て1950年代には国家開発計画に基づく資源保護・育成計画として開始され、半世紀にわたり継続されてきた。資源造成の目標・方向性と方法は、国土環境保全、燃料・飼料供給、木材産業用材林育成の間でゆれつつも、1970年代半ばまでは、産業用材の育成が政策的にかなり行われてきた。しかし、林地荒廃の悪循環からの脱却をが進まず、1960年代には燃料・飼料供給を重視した社会林業が始まった。1976年、農業委員会などにより産業植林の推進と共に社会林業の強化が提案されたが、1979年には世銀の借款や外部NGO資金の導入、林業公社の設立など、社会林業による森林整備が一段と重視されるようになり、より効率的な資源整備手段としての産業植林は進展しなかった。

折からのグローバルな環境問題への国際的な関心の昂揚もあり、1988年の国家森林政策は森林の国土・環境保全機能整備を最優先課題とし、国土面積(3 億2,873万ha)の3分の1の地域に森林被覆を回復するという目標を明示的に定めた。また農村コミュニティ整備のへの地域住民の主体的な参加を促進し、林地外の農地を含む荒廃地の植林をも積極的に進めるとした。この方針は現在も森林政策の基本となっており、1980年代末からは欧米のNGOを中心とする資金、また、90年代半ば以降は日本も融資を行っている、住民参加型森林管理(JFM)方式など、国際的な支援を得て植林面積は急速に増加した。こうして80年代半ば以降の累積植林面積は2千数百万ha〜3千万haとなり、面積でみた森林資源収支はプラスに転換したかに見える。しかし森林の質・ストックは明確に把握されておらず、林産物資源の収支は依然としてマイナスの状況が続いていると推定される。

政府はこのような資源環境の下で、林産業に対して工場立地、価格、流通の規制、公企業育成などの介入を通じて新規参入を抑制する方向で森林資源及び産業の保護・育成策を長期にわたって実施してきた。林産企業は、大部分が国・州有林地である林地からの資源調達が先細りする中で、繊維原料や木材を農民の farm forestの実施奨励によって確保せざるを得ない状況で停滞が続いた。紙パルプ産業も例外でなく、特に資源育成に関して企業による国・州有林への産業植林及び借地の禁止や、農地取得制限などの土地利用規制が行われると共に、アグロ及び古紙ベースの中小生産システムの育成、公共企業の拡充を図るなど、生産及び市場への介入・規制が厳しく行われてきた。紙パ産業では、この20年間木質原料のパルプ・紙一貫工場の新設はなく、原料は、木材・タケの木質繊維ベース38%、バガス(サトウキビ)・藁(小麦・稲)等のアグロベース36%、古紙ベース26%の構成となっており、紙・板紙の設備の4分の1が休止する状態にある。

冷戦構造の解消と共に始まったインドの経済改革は、90年代、アジアNIESの国の発展が明らかになるにつれてようやく本格的に実施されるようになり、競争的な産業環境創造を目指して、企業精神を阻害してきた経済・産業・貿易・海外からの投資等に対する規制を基本的に取り除いてきた。こうした自由化と開放に向けての経済改革努力により、経済は比較的順調に拡大し、今後持続的に成長する可能性も生まれてきた。需要拡大基調の下で林産業関連の価格は上昇傾向が続き、資源制約から商品輸入及び原料輸入が急増しつつある。紙パなどの林産業関係者は、政府に対して産業向け植林の規制及び土地利用規制の緩和を含む森林資源政策の転換、植林及び林産業への外資導入促進などの要請を行っている。一部の先進的企業はfarm forestシステムを利用してユーカリクローンなどの成長力の高い苗木の導入による資源育成を積極的に推進しており、土地利用規制に対しても経営・運用システムの工夫によって植林規模を拡大する方策を追求している。

インドは人口に比して必ずしも資源が豊かとは言えず、貧しさからの脱却ができないために人口増と一次産業資源(国土環境資源)への過度な依存による荒廃が続いてきており、この悪循環からの脱却には経済の発展が不可欠でそのための貿易の拡大が必須というのが現在の発展のシナリオである。この数年は、海外からの投資受け入れのための資本市場環境整備の強化を行うと共に、全面的な貿易自由化をも視野に入れて、直接投資、加工貿易拠点整備への投資拡充のための経済特区の設置や経済外交など、全方位的な貿易拡大政策を積極的に推進し始めた。紙パ関連の輸入も急増している。

しかし、自然資源の回復と造成は容易ではなく、その見通しが明確になっていない現状では資源育成の手段の一つとして成長性の高い樹種の大規模な一斉植林(産業植林)を推進するコンセンサスを確立することは難しい。これを踏まえて今後の戦略的な手順・シナリオを展望すると、貧困な農民による資源破壊の状況をくい止め、国土資源収支をプラスに転じることが先決となろう。次に流域の水資源経営をベースとした流域改善計画としての国土環境整備の展望を持つことが必要である。林産業振興のための資源整備及び森林被覆回復の手段として成長力の高い樹種の大規模な植林を位置づけることはその後になると考えられる。 JFM方式は農業生産性向上に軸足を置いた社会林業であり、国全体の国土環境資源整備と農業振興による貧困解消の見通しを持つことによって、軸足を次第に効率的な林産業資源育成へと転換し、さらに林地取得及び利用規制の緩和という次のステップに進めるコンセンサスを確立することが可能となろう。

以上の総括から判断して我が国の紙パ産業が、いわゆる開発輸入型の産業植林投資(大規模な土地取得による植林とチップの生産・輸入)をインドを対象に推進する可能性は当面考え難い。しかし、インド木質繊維委員会は、2015年には木質繊維の需要量はほぼ現在の倍以上になり、国内生産と同規模量を輸入せざるを得ないことになると予測している。林産資源供給不足に備えて、余力のある林産企業はfarm forestシステムを利用してユーカリクローンなどの早生・高収穫苗木による資源造成を進めてきており、その成果が目に見えるようになってきている。その拡充のためには外部の資本導入も厭わない状況にある。 また苗木育成のベンチャービジネスも始まっており、現在、小〜中規模で多様な経営形態による企業あるいは資本の内外からの植林投資の機会が大きくなっている。JFM方式の植林も成果と評価が目に見えて認識されつつあり、このような状況が進めば、超長期的な森林資源整備の手段としてJFM方式のみでなく、木材生産効率の高い樹種、大規模植林手法の再評価、及びJFM方式への産業植林要素の採り入れなど、より現実的な資源保全・整備手段への再認識が進むと考えられる。こうしたステップを経過することにより、土地利用規制の緩和も俎上に上り、我が国企業による産業植林の可能性も進展すると考えられる。

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