事業・調査紹介

産業植林関連事業

2001/11/17

【産業植林適地の発掘調査】
メキシコ合衆国(2001年度)

目次

メキシコ合衆国位置図
はじめに
報告書要旨

  1. 調査の目的と概要
    1. 調査の目的
    2. 調査団員の構成
    3. 調査日程
    4. 面談者リスト
  2. 一般情勢
    1. 一般概況
    2. 主要経済指標
  3. 自然的、社会経済的条件
    1. メキシコ略史
    2. 自然的条件
    3. 社会経済的条件
    4. 日本・メキシコ関係
  4. 林業政策と関連法令
    1. 林業・林産業の促進に関する法整備の動向
    2. 民間植林事業における適用状況
    3. 土地制度
  5. 林業行政機関
    1. 中央政府
    2. 地方政府
    3. 試験研究機関
    4. インドの植林
  6. 森林
    1. 天然林
    2. 人工林
  7. 産業植林の可能性
    1. 外資政策
    2. 政府の支援措置
    3. 金融機関の支援措置
    4. 森林保険
  8. 林産業と林産物貿易
    1. 林材生産
    2. 林産業
    3. 林産物貿易
  9. 植林地の現状
    1. 植林適地の考察
    2. 土地利用の状況
    3. 土地所有の状況
  10. 植林技術の現状
    1. 現行の植林技術
    2. 労働力の現状
    3. 植林コスト
  11. 環境への影響
    1. 環境政策の原則
    2. 環境政策
    3. 環境悪化の実態と対策
  12. インフラストラクチャー
    1. 道路鉄道事情
    2. 港湾事情
Appendix
  1. ARODEPLAN補助金付与のための実施規定
参考文献
写真
要約

調査の目的
メキシコは我が国の5倍の面積を有しアメリカとの国境が広い砂漠地帯のため、一般的に亜熱帯の砂漠の国という感じが強いが、それは北部地域の一部に限られている。地理的条件や地形の複雑さのため、熱帯・亜熱帯気候から高山性温帯気候、砂漠気候と多様な気候帯が存在し、生物多様性にきわめて富んだ国といわれている。
特に南部太平洋地域とメキシコ湾岸地域には産業植林に適した場所があり、自然条件にも恵まれていて、国内の企業4社が産業植林を実施し生育状態も良いとの情報を得た。メキシコは産業植林投資が期待できる国の一つであり、調査対象地域を具体的に植林が実施されている地域にしぼり、事業実施のための基礎的な情報を収集する目的で調査を行った。

メキシコ合衆国の概要
メキシコ合衆国は北米大陸南部に位置し、北はアメリカ合衆国、南東部はグアテマラおよびベリースと接している。国土面積は1,967千km2(世界で14番目、日本の5倍)で、人口は97.4百万人(2000年)、主要言語スペイン語、首都はメキシコシティーである。
2000年においては、一人当たりGDPが5,745 US$、実質GDP成長率も6.9%、インフレも低下傾向で8.96%、失業率も減少傾向で2.21%となっている。米国経済と不可分なっている中で貿易収支の悪化がみられ貿易赤字(−80.5億US$)である。外貨準備高は安定(336億US$)している。

自然的、社会経済的条件
四季はなく、乾季(10月〜5月)と雨季(6月〜9月)に大別され、気候も場所ごとに異なる。雨季でも中央高原地帯の雨量はわずかで、アメリカ国境沿いの山岳高原地帯にいたっては、雨はほとんど降らない。南部のオアハカ(Oaxaca)州、ベラクルス(Veracruz)州、タバスコ(Tabasco)州などでは年間雨量は2,200〜3,500mmに達する。メキシコ湾岸沿いやカリブ海に面したユカタン半島、太平洋沿岸の低地帯は乾季・雨季に関係なく常夏である。
メキシコの主要貿易相手は米国で、輸出総額1,664億ドルの88.7%、輸入総額1,745億ドルの73.1%を占める。輸出は自動車、家庭用電気・電子製品、衣類(縫製)などの保税組立・加工である。米国市場に近いこととNAFTAの恩恵により急成長してきた。
石油関連の税収入が国家財政の30%を占めている。また、米国への不法滞在労働者は850万人に達しているといわれ、彼らによる本国送金は約80億ドルと経済を支える無視出来ない要素となっている。

林業政策と関連法令
地域開発では、気候、土壌、天然資源に恵まれながら、経済発展の遅れていた南東部の開発を重視している。環境の保全と調和の取れた産業植林の振興などの林業開発は、貧困対策の一環としても推進しつつある。
林業振興に関して主たるものはPRODEPLAN(産業植林を補助金の付与で助成する計画)である。2001年になり、これまで林業行政を行ってきた環境天然資源省(SEMARNAT)の外局として国家林業審議会(CONAFOR)が発足し、PRODEPLAN計画(25年間に875千haの産業植林を造成する)もより実際的になってきている。計画が実現すると毎年18百万m3の木材を供給できる。政府からの助成措置は、植林事業の当初から最大7年間の経費について、その一部となる90%を補助金として、植栽後翌年から支給する。税制上の奨励措置(インセンティヴ)として、所得税や不動産税などをはじめとする各種の税軽減策が審議されている。
メキシコの土地制度は特異であり、土地の所有は、エヒードやコムニダと称する共同利用・共有地形態があり農地の48%を占めている。大土地所有者はごく少ない。1992年には大がかりな土地制度改革が行われた。 1)株式会社による土地の所有が認められ土地所有の上限は小土地所有者の上限の25倍とされたこと、 2)エヒード有地の賃貸(借契約期間は30年以内)と売買を認めたことなどである。しかし現在までのところ、植林会社は土地をリースによって取得している。リースによって取得する保有地については上限規定も、外資に関する制限もない。エヒードが土地を貸す場合には、エヒードの最高機関である総会によってその決定を行うものと考えられ、植林会社による交渉は構成員全員に行うことになり、簡単にはいかないのが実態である。

林業行政機関
森林・林業行政は環境天然資源省(SEMARNAT、Secretar誕 de Medio Ambiente, Recursos Naturales)が所掌している。産業植林の振興に当たっているのは内局の一つである天然資源庁の中の森林局・産業植林開発課である。 SEMARNATの支局は州ごとに置かれている。森林法の方針のもとに地方分権が進められているが、現時点では産業植林の計画作成、許認可についても中央機関から権限委譲されていない。
政府系の試験研究機関としては国立農牧林業研究所(INIFAP、Instituto Nacional de la Investigaci溶 Forestal y Agropecuaria)があり、広い国土の中で異なる自然条件を勘案して全国に8箇所の地域研究センターが設置されている。植林の研究は20年ほど前から始められ全国に14箇所の試験地がある。

森林
北部から中央部にかけて乾燥地帯、半乾燥地帯、冷温帯及び暖熱帯と続き、南部から東南部のとくに低地は熱帯である。森林植生はこれらの条件に伴い特徴のある森林タイプが存在している。
自生種のマツやナラの天然林、カオーバやセドロなどの高級材樹種を含む熱帯林をはじめとして、さらに北部の乾燥植生や、人為的に撹乱されてきた土地も含めた森林・林地面積は約1.4億haで、国土の72 %を占める。乾燥地帯や、これまで農牧業開発に伴って生産力が劣化したり、エロージョンが進行したりしている土地が非常に多いことが特徴づけられている。この内、荒廃地あるいは撹乱された土地とされている22百万haにものぼる土地の大部分が、政府が今後植林を奨励していく対象地と理解される。
SEMARNATの説明によれば、2000年までの人工林は、わずかに45千haでそのほとんどが最近10年ほどの間に植林されたものである。産業植林に適した土地としては、12百万haもあることが調査の結果で把握されており、補助金政策を柱として今後急速に拡大していく状況にある。中でも、南東部の低地には粗放な農地及び放牧地で緩傾斜の土地が1,950千ha存在し、気候など自然条件から判断しても高い成長が望めることから、産業植林推進の重点地域とみなされている。

植林投資環境
一部の規制業種を除く一般業種については外資を内国民待遇とし、100%外資参加を認めている。植林事業のように植林するために土地を取得する事業については、一部の規制業種に該当し、外資は49%までしか資本参加できない。
現在、外国資本による植林事業は行われていない。収穫時の国内需要はあまり期待できない状況から、今回調査した2社および林野行政を司る環境天然資源省(SEMARNAT)も、外国資本の自国企業への資本参加や共同経営、チップや丸太での輸出を望んでいる。
金融機関の支援としては、メキシコ銀行(FIRA/農業信託基金)が産業植林プロジェクトに必要な金融の90%まで支援できること、メキシコ外国貿易銀行(BANCOMEXT)は林業分野の輸出について投資額の50%まで金融支援できることなどの措置がある。

林産工業と木材貿易
90年代の年平均丸太生産量は22百万m3で、その内訳は、おおよそ1/3が用材、2/3が薪炭材である。丸太生産量はこの40年間にほぼ倍増しているが、用材と薪炭材の比率は安定している。1999年のメキシコの用材生産量は全体で8.5百万 m3となっており、用途別では、製材品が73%で、これも大きく偏っている。ついでセルロースが15%となっている。
マツをはじめとする針葉樹では、製材品が8割と大きい。ナラではセルロース、つまりパルプとしての利用が最も多く、その他の広葉樹では、木炭としての利用が最も多い。基本的にはマツの製材加工が、メキシコの現在の木材生産を特徴づけるといってよいであろう。
製材工場は全国に分布しているが、中央地域に多く所在している。これは、この地域がメキシコ・シティー(Mexico City)などの製材品の消費地を有し、消費地立地の工場が多いためであろうと考えられる。
林産物に関してメキシコは基本的に輸入超過の国で、薪炭以外ではいずれも輸入超過である。つまり、国内生産が国内消費を賄えず、全体では自給率が55%に過ぎない。世界的にそうではあるが、メキシコも加工品の段階で林産物を多く輸入している。
メキシコで林産業が十分に発達していない理由は、用材が生産出来る森林資源が不足していることだろう。歴史の古い国であるから、原生林資源はほとんど残っておらず、その一方で人工林経営は10年ほどの歴史しかない。そのため、メキシコでは、今後、人工林資源の造成と林産業の育成を並行して進めていくことが課題とされている。

植林適地の現状
気象や土壌など自然条件から見たパルプ用材の植林適地はメキシコ南東部のタバスコ州、ベラクルス州、オアハカ州東部の低地に広範に存在する。 SEMARNATによる産業植林適地の推定面積は、タバスコ州383千ha、ベラクルス州683千ha、オアハカ州804千haである。
今回現地調査したタバスコ州、オアハカ州の低地に植栽されているEucalyptus.grandis、E.uropylla、 E.urograndisは健全な成長を示しており、特に樹高の伸びが優れていて、ほぼ35 m3/ha〜45 m3/haの年平均成長が期待できることを示していた。ただし、植林予定地の選定にあたってはハリケーンの襲来による冠水の被害を受けないように注意する必要がある。 オアハカ州南東部低地地方三郡では農地コムニダ38.8%、エヒード30.5%と共有地が大半を占め、私有地は30.7%しかない。そのエヒードの土地利用は、自然草地、疲弊地、叢林化している面積が最も多く42.6%を占め、次いで耕地32.8%となっている。
土地所有形態の複雑さ、また外国資本による事業用地の所有権は49%以上の面積は許されないことからも、外国企業が単独で産業植林事業に着手することには困難が予想される。

植林技術の現状
植林技術は、ブラジルの研究機関IPEFから育種改良された種子を移入し、ブラジル、カナダの技術を導入して育苗を行っている。現地植林会社二社(Desarrollo Forestal社、Plantaciones de Tehuantepec社)は、年間生産能力6〜7百万本規模の苗畑を保有している。地拵えは深耕できるブルドーザーやトラクタで行い、植え付けには植え付け機を使用している。下草コントロールには各種の最適な機械と除草剤で対応している。施肥も3回程度にわたって行っている。
育種は、優性選抜木から採種して育てた苗を接木してクローン育種を行う一方、組織培養技術を植林に応用していく構えを見せている。研究開発テーマとして、優良種子の選抜、組織培養、クローン栽培人工交配などをあげている。

環境への影響
地方の自然環境の保全・回復を重視し、各省の環境、水資源、森林、漁業部門などを合体して、環境天然資源漁業省(SEMARNAP)を発足させた。この傘下には、荒廃した林地や農牧地の復旧と保全を扱う土壌保全局やFAO主導のもとに熱帯林の保全と持続的利用を目指して活動をしている熱帯林行動計画(PROAFT)事務局がある。また、外局では、すべての環境保全に関する法規の遵守状況を監視している連邦環境保護管理庁(PROFEPA)と河川・水利用を統括している国家水委員会(CAN)がある。同省は2000年には環境天然資源省(SEMARNAT)となったが、厳しい環境行政を引き継いでいる。
メキシコにおける森林の減少については、多くの推定があり、1980〜1990年の10年間の年平均減少面積は、農業水資源省(SARH)の1991年調査では年間370千ha、また、FAOの1995年調査では年間680千haの森林が減少したとしている。これらの森林減少の原因としては、草地化、農地化、山火事、不法伐採などがある。
PRODEPLAN対象地は生産力が劣化した土地や荒廃した土地であり、天然林を伐採しての植林は認められていない。また、植林計画面積の15%以上はその土地の自生植生を保存することになっている。

インフラストラクチャー
道路網は、高速道路・一般道路で58千kmが整備されており、自動車は全国の主要都市間にも、また主要都市と州内の市町村の間にも、利便性・定時性・運行頻度・速度など、全ての面で鉄道よりも優れており、自動車は旅客輸送の98%、貨物輸送の62%と圧倒的なシェアを占めている。鉄道網は、3.9千kmが整備されているものの現在も、ほとんどが単線・非電化の状態にある。貨物輸送においても、全体に占める鉄道輸送のシェアは減少傾向にある。
港湾事情ついて、サリナクルス(Salina Cruz)港は、連邦政府が所有する16港の一つで、アカプルコ港と並ぶ太平洋岸の主要港である。1994年7月に貿易港として整備されて開業した。バース長さ 484m、464m、275 mの三基を有し、水深は12mで、出入港水路が水深 12〜14mとなっている。なお日本までの距離は約12.4千kmである。
この地域は豊富な原材料と安い労働力が存在し、港では側方へのチップヤード用地確保の可能性も高い。各種事業の投資対象候補地域としての要件を備えていると考えられる。

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